僕の名前は十兵衛・・11月5日生まれの4番目の息子です・・よろしくねっ。


by fumiyoo
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2番目の姉

朝の休憩時間に、姉から貰った「きもの」を着て、これも貰った「帯」を締める。昼間まで割烹着を着て店に出る。昼一番に着物姿で姉のいる病院へ行く。1時間半の電車の旅・・何を思ったのか、2番目の姉から貰った「着物・帯」、昨年亡くなった姉の「コート」を引っ掛けて出かけた。・・

姉は思ったよりは元気であった。よくしゃべった。しゃべり続けて2時間がたった。
昔の話・着物の話・子供たちの話・気になる事の話・後の始末はちゃんとしてあると言う話。

私は臨月のように大きくなった姉のお腹をみて・・「お姉ちゃん動けんの?」と当たり前のような事を聞いてしまった。点滴も気になった。「お姉ちゃん、これっ。何の薬?」何もかも承知のはずなのに、目の前の現実にピンと来ないわたし。不躾に聞いてしまった。
「これっ、モルヒネ。」「・・・フーン、局部だけノンか?」なんて不躾なんだろう。
「ううん、静脈に点滴してんやから、そのうち頭にくるんやで~~」
「・・・・フーン」。
まるで馬鹿なわたし。
何も分かってない。

「お腹減ったから、持ってきた巻き寿司食べるわ!」
「此処で食べ!」
「うん」
姉のベッドの横で食べる。姉が起き上がって「美味しそうに食べてんなぁ~、私にもちょっとおくれ」そういって巻き寿司の具だけを口に入れた。
座れないはずの姉が座っていた。

看護婦さんが来る
「スリッパ、はきやすい所に置いといてや!。ベッドの下やと取れへんから」
「そうですね、此処に置きますね」
と言って、ベッドの下にあったスリッパをベッドの横へ揃えて置いた。

先生が来る「如何ですか?お薬効いて来たかなぁ~あと1週間もすればもっと効いてきますからね」
姉はうなずいて笑った。
「あの先生、優秀なんやで、しょっちゅうアメリカへ行きはる。学会の集まりなんやろうなぁ。あの忙しい人が昨日1時間もベッドの横に座ってお話してくれたんや!まるで牧師さんみたいやわ」。
私は色んな思いが頭をめぐらしていて、言葉が見つからなかった。
どんな言葉を選ぶよりも「とぼける以外、術を知らない私」がそこにいた。
私はいつもこんなとき「とぼけて気づかぬ振り」をして逃げる癖がある。
真正面から向かい合ったところで何が生まれるんだ!と片方で思っている。
私の悪い癖なのかもしれない。
姉は如何思っただろうか?

「帰るわ!」と言うなり後ろを見ずに小走りに走って病室を出た。
「さよなら」は言いたくない。言わせたくない。そんな思いが私を急がせた。

私が帰った後に姪や甥が先生から「最後の通告」を受けた。
姉は「子供達にそれを聞かせるのが可愛そうだ」とも言っていた。

何時かは来る「わかれ」・・・
早すぎはしませんか?
お医者様は「治療」は終わり、「安らかに逝かせる為のお薬」を投与するのだ。
あまりにも明確な頭脳がとても悲しい・・

歳いって「呆ける」のは神様からの「ご褒美」だと聞くが、姉にはその「ご褒美」がない。

あの、ベッドの横にすぐにでも履けるように揃えられたスリッパは姉の夢なのかもしれない。

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   電車の中・・・
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by fumiyoo | 2008-02-01 15:26 | 姉たち・・